Protein Aを活用した抗体精製の基本と効果的な手法
抗体研究の中で欠かせない一環が、高品質な抗体の精製です。このブログでは、Protein Aを用いた抗体精製について解説をします。
Protein Aとは?
Protein Aは、Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)の細胞壁に存在する40~60 kDaのタンパク質です。免疫グロブリン(特にIgG)のFc領域に特異的に結合します。
Fc部位は抗体が抗原に結合した後の様々な免疫反応を開始するために機能する領域です。IgGとのアフィニティー結合サイト(Ka=10-8M)は4箇所あります。Protein Aは4Mウレアや6Mグアニジン塩酸にような変性剤にさらした後でも活性を保持しています。
抗体精製においては、Protein Aは一般的にウサギのポリクローナル抗体精製によく利用されます。
抗体との結合
黄色ブドウ球菌はヒトや動物の皮膚、消化管に常在し、時には感染症や食中毒の原因ともなる菌です。
Protein Aは、免疫グロブリンのFc部位と結合します。またIgGの大半の種およびサブクラスへ結合します。
また、IgGは免疫原に応答して哺乳動物から産生される免疫グロブリンとして、最も豊富なタイプです。
サブクラスごとの反応性
Protein Aと免疫グロブリンとの結合性は抗体の動物種やサブクラスにより異なります。
例えば、ヒトIgG1, IgG2, IgG4には強く結合しますが、ヒトのIgG3、マウスのIgG1との結合性があまり強くありません。またマウスIgG2a, IgG2b, IgG3には強く結合しますがマウスIgG1とのアフィニティーは、生体条件のバッファー(Tris-HClやリン酸ナトリウムバッファー)中では弱くなります。
Protein Aによる抗体精製で1番可能性のあるトラブルは、ヒトのIgG3、マウスのIgG1だと認識せずにProtein Aでの精製を試み、抗体が十分に結合しなかったという事例です。
Protein Aを利用した抗体精製の基本
Protein Aが固定された粒子が充填されたカラムを用いて抗体を精製します。
1.結合させる:カラムへ原材料(血清)を添加させ、免疫グロブリンをビーズに結合させます。
2.洗浄する:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)をカラムへ添加・通過させ、免疫グロブリン以外の成分を除去します。
3.溶出:酸性の溶出バッファーをカラムに添加して、カラムから溶出する小分画の抗体溶液を収集します。
4.中和/バッファー交換:溶出した抗体溶液に1M トリス-HCl(pH値8.5)を添加して中和します。長期保存したい場合は、脱塩カラムまたは透析法を使用します。
Protein Aを用いた抗体精製の基本を解説しました。Protein Aと目的抗体の特性を理解し、実験に生かしてみてください。
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