抗体の作製方法: 免疫学の基本手法
抗体はB細胞が産生・放出するタンパク質で、体内に侵入した病原体などの異物に結合し、生体内の異物への防御において重要な役割を果たします。本記事では、抗体の作製方法に焦点を当てて解説します。
セクション 1:動物を用いた抗体の作製方法
1.ポリクローナル抗体作製法:
動物に抗原(免疫源)を注射して、多様な抗体を得る方法です。
繰り返し抗原を注射し、数か月後に血液(血清、血漿)を回収し、抗体を精製します。
この時に得られた抗体は、免疫源に反応する多くの抗体を含んでおり、ポリクローナル抗体です。
【抗体作製時に採用される免疫動物】
マウス、ウサギの他に、ラット、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ロバなど
様々な哺乳動物や鳥類が免疫動物として使用されています。
同じ脊椎動物であっても、B細胞の遺伝子構造や多様性、産生される臓器の違いは
種によって異なり、抗体のアイソタイプも異なります。
2.ハイブリドーマ法:
抗体を産生しているB細胞をひとつだけ取り出し、培養・増殖することにより、モノクローナ
ル抗体を半永久的に得ることが可能です。
抗体を産生しているB細胞と不死化したがん細胞(ミエローマ)を人工的に融合させ、
特定の抗体遺伝子を維持し、半永久的に生存できる融合細胞(ハイブリドーマ)を作成します。
ハイブリドーマの中から、特に結合親和性や特異性に優れたモノクローナル抗体を産生する細
胞を選択します。
動物に抗原を注射してからモノクローナル抗体を得るまでに基本4か月から半年ほどかかりま
す。
3.トランスジェニックマウス法:
内因性 Ig のノックアウトマウスにヒトIg 遺伝子を導入し、マウス抗体の代わりにヒト抗体が産生することができ、完全ヒト抗体を作製することができます。
セクション 2:動物を用いない抗体の作製方法
1.ファージディスプレイ法:
バクテリアファージの表面に抗体の結合能を決めるH鎖とL鎖の可変領域を短いアミノ酸配列で
繋いで抗体ファージライブラリーを提示させ、標的分子とファージを反応させ、標的分子に結合し
たファージを回収し、大腸菌感染によるファージライブラリの複製・増殖するパニング操作を行
い、標的の特定的な抗体を取得し、配列決定する方法です。
*バクテリアファージとは細菌(バクテリア)に感染するウイルス。バクテリアのみに感染するため、人間の細胞には感染しません。
2.単一B細胞抗体クローニング法
感染症などの患者からなる標的抗原を用いて、抗原を特異的に認識する抗体を発現するB細胞を単離し、単一細胞から抗体遺伝子をクローニング、発現ベクターを動物細胞に導入して抗体を発現させてスクリーニングし、目的の抗体遺伝子をクローニングする方法です。
結論:
- 抗体の作製はポリクローナル抗体作製法、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法など複数の手法があり、それぞれの特徴や応用が存在します。
- 精製技術は抗体の品質や応用性に大きな影響を与えるため、慎重な手法の選択と実施が重要です。
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